初めての任意売却

現金の持ち出しがない理由

現金の持ち出しがない理由

任意売却にかかる費用」で記述しました通り、任意売却では、原則、持ち出しとなる費用はありません。

理由は、不動産売却にあたって必要とされる諸費用が、売却代金から差し引かれることになるからです。

もちろん、売却代金から諸費用が差し引かれれば、債権者への返済金額は、その分少なくなります。

しかし、そうであっても、売却依頼主様、債権者、双方の当事者にとって、それぞれのメリットがあるからこそ、現金の持ち出しがなく、任意売却を進めることができるのです。

債権の回収金額を最大化する観点から

持ち出しがない最大の理由は、債権者にとって、任意売却で進めるメリットがあるからです。

端的に言えば、債権の回収金額が最大化できるからです。

債権者は、通常、競売での売却価格(※想定価格)よりも、任意売却での売却価格のほうが、高くなると見込んでおり、一定の諸費用を控除経費として認めても、より多くの債権が回収できると考えています。

以下、回収金額からみた比較表です。

回収金額からみた任意売却と競売との比較

【事例1】会社都合退職による 東京の任意売却」の例を元にした、説明です。

債権者(住宅金融支援機構)が、競売での落札見込価格を、任意売却の売却価格の8割掛け(1,320万円)になると想定します。

(※多くの債権者では、東京カンテイによる売買データ、不動産鑑定士による簡易評価書等を踏まえ、個別の状況に応じた価格評価を行い、競売での落札見込金額を試算しています。)

任意売却 競売
売却金額 16,500,000円 13,200,000円
各種費用   1,244,750円     650,000円
差引回収金額 15,255,250円 12,550,000円

任意売却では、15,255,250円の回収金額となる一方、競売では、それよりも低い、12,550,000円という回収金額になっています。

任意売却(15,255,250円) ― 競売(12,550,000円) = 2,705,250円

任意売却と競売との回収差引金額は、2,705,250円となり、任意売却のほうが、債権者にとっては、回収金額が増えるので、メリットが高いことがわかります。

これを踏まえると、債権者が一定の諸費用を認めたとしても、任意売却での手続きを認める理由がご理解いただけるかと思います。

もし、本音を貫くのであれば…

本来なら、任意売却での売却金額(16,500,000円)をそのまま返済に充当してもらいたいのが、債権者(住宅金融支援機構)の本音です。

しかし、その本音をもし貫こうとするのであれば、今度は逆に、売却の手続きが進まなくなってしまいます。

無報酬で、仲介業務を引き受けてくれる不動産仲介会社など皆無です。司法書士にしても然りです。管理費等が滞納している状態であれば、購入希望者も躊躇し、買い受ける人は少なくなるでしょう。

その結果、競売手続きをとらざるを得ないこととなり、債権回収金額はかえって少なくなってしまいます。

そんな理由で、一定の諸費用(売買仲介手数料や抹消登記費用等)を売却代金の中から認めているのです。

任意売却による回収金額が競売よりも上回ると考えるために、債権者は、控除経費を考慮した任意売却の手続きを積極的にとってるのです。

任意売却と競売との回収金額の差が、現金持ち出しとならない主な理由!

ローンが返せなくとも、引越し費用がもらえる理由

さらには、上記のような理由から、ローンが返済できずとも、引越し費用がもらえるのです。(※債権者が引越し費用を認めた場合です。)

例え、売却依頼主様に対して、30万円の引越し費用を認めても、任意売却のほうが、競売よりもはるかに多額の回収ができるわけであり、売却依頼主様に、一定の引越し費用を認めているのです。

ただし、高額の引越し費用を認めるともなれば、それは本来の任意売却の主旨(※やむを得ずローンが支払えない事情)から逸脱することになります。

それゆえ、ここ最近では、住宅金融支援機構をはじめとする、多くの債権者では、一定の基準を設けるようになり、必要最低限の金額(10万円~30万円程度)しか、引越し費用を認めないようになってきたのです。

任意売却手続きを促す観点から

任意売却をすると決めても、その段階では、売却依頼主様の多くは、手持ち資金がありません。

売買仲介手数料は言うまでもなく、引越しできるほどの現金もないことがほとんどです。加えて、マンションにお住まいの方であれば、管理費・修繕積立金を滞納している方も多いです。

もし仮に、売却が進められたとしても、購入希望者が現れて、諸費用を負担するだけの現金がなければ、売却手続きは完了できません。

(※言うまでもなく、そもそも、諸費用を出せるくらいの現金があれば、住宅ローンを滞納することなんて、ないでしょう。)

そこで、債権者は、売却代金の中から、一定の控除経費を認めることによって、この課題を解決しているのであります。

売却依頼主様にとっては、通常の不動産売却でかかる現金負担がないのであれば、売却手続きが非常に進めやすいです。

また、引越し費用の一部の捻出も可能であれば、競売よりも、確保できる可能性が高まりますので、任意売却を選択するメリットは大いにあると言えるわけです。

任意売却手続きを促すことも、現金持ち出しがない理由!

まとめ

現金の持ち出しがない理由は、基本的には、下記の2つです。

  • 任意売却であれば、競売を上回るだけの回収金額が見込めるため
  • 任意売却の手続きをスムーズに進めるため

債権者にとっても、売却依頼主様にとっても、メリットがあるからこそ、現金の持ち出し費用がないのです。

ローンを滞納しても、多くの場合、債権者から、任意売却をするよう提案を持ちかけてくるのは、こうした理由からです。

例え、住宅ローンの支払いができず、長期間、滞納が続いていた場合でも、金額が折り合えさえつけば、当てはまります。

債権者は、債権の最大回収を図る観点から、時価に近い金額で売却できる任意売却に期待を寄せています。

誠意ある前向きな行動が、持ち出し負担がない「任意売却のメリット」につながっているのだということを、改めてご理解いただければと思います。

補足

競売が開始された後であっても、多くの債権者では、任意売却を認めています。その理由は、執行費用(予納金等)を支払っても、それを上回る回収金額が見込めると考えるからです。

誠意ある行動が、持ち出し負担がないメリットへとつながってきます。